ルームエアコンの能力試験(その2)
2024年8月
ルームエアコンの能力測定方法について前月ご紹介しましたが、もう一つ、世界中のエアコン性能試験所で採用されている方法があります。前回(その1)の「平衡式室形熱量計」は、能力がそれほど大きくないルームエアコン(家庭用エアコン)の試験に多く採用されています。しかし、この方式は能力が大きい業務用エアコンには向いていないので、小容量のルームエアコンにも使用できて、大容量の業務用エアコンの能力測定にも採用されているのが、「空気エンタルピー測定装置」と呼ばれている試験装置です。
上の写真は、ルームエアコン用試験設備の室内側を写したもので、室内機(青文字)は受風室(黄文字)の右端上方に設置されています。この装置で空気エンタルピーを測定してエアコンの能力を算出します。
その前に、ちょっと難しいですが、空気エンタルピーの説明をします。空気エンタルピーとは、ある状態の空気が持つエネルギーのことです。ごく簡単に言うと、温度と湿度の高い空気の方が、エンタルピーは大きくなります。次に、能力測定方法の考え方を説明します。
エアコンを一定の能力で運転し、次の①と②を計測します。(簡略化のため温度で説明)
①室内機が吸込む空気と室内機が吹出す空気の温度差 ΔT:温度差(熱量差)
②エアコンが吹出す空気の量 Q:風量(時間当たり)
①と②から、エアコンの能力を次の式で求めます。
エアコンの能力
⇒ ΔT × Q(熱量差×風量):単位W(ワット)
説明を簡単にするため温度でお話しましたが、実際は、湿度(湿球温度)も測定し、吸込みと吹出し空気のエンタルピー差を求めます。日空研では、二種類の試験設備を持ち、試験項目により使い分けています。